コロナワクチンと免疫抑制薬

更新 2021/6/11

医療従事者等へのワクチン接種が進み、一般の方への個別接種・集団接種も増えてきています。
ここではコロナワクチンと免疫抑制薬について述べたいと思います。

コロナワクチンの効果について

コロナワクチンはパンデミック(世界的大流行)への対抗策として、有効性・安全性ともに一定の水準を満たした製剤が使用されていますが、長期的なデータがないため未知の部分があることも否定はできません。
これら未知の副反応のほか、因果関係は不明ですがワクチン投与後に亡くなった方がおられること、アナフィラキシーなど既知のリスク、有効性が低下する恐れのある多重変異型ウイルスの台頭などを危惧して接種を見合わせる方も一定数いらっしゃると思います。

一方、風邪やインフルエンザよりはるかに重症化率・死亡率の高い新型コロナウイルス感染症の発症を高い有効率(ファイザー製95%、モデルナ製94%)で防げるワクチンに期待を寄せている方は多くいらっしゃると思います。
両ワクチンは既存の様々な株にも十分な効果が確かめられています。

イスラエルのデータ(2021年1〜4月の主に英国株に対するファイザー製ワクチンの効果)では、2回接種7日後以降の予防効果は感染91.5%、発症95.3%、入院97.2%、重症化97.5%、関連死96.7%でした。
また、1回のみの接種では感染57.7%、発症62.5%、入院75.7%、重症化75.6%、関連死77.0%でした。

mRNAワクチン(ファイザー製やモデルナ製)は2回投与が基本ですが、前述したイスラエルのデータからわかるように1回のみの投与であっても一定の効果はありそうです。ただ、十分な効果を保証するものではなく、抗体量は2回目投与後に大きく上昇することがわかっているため、原則2回投与となっています。

また、新型コロナウイルス感染症の後遺症(嗅覚障害、呼吸苦、倦怠感など)が問題となっています。
2021年5月19日に米国から報告されたデータでは新型コロナウイルスに感染した約19万人(18~65歳)のうち14%に急性期を過ぎたあと治療が必要となる後遺症が生じています。一過性の症状で改善すればよいのですが、中にはこの後遺症に長く苦しんでいる方もいます。
ワクチンによってこれらを未然に防ぐことができるというのも大きなメリットと言えます。

コロナワクチンの副反応について

事前にコロナワクチン接種を諦めざるを得ない状況はごく一部の特殊な場合(ワクチンの添加物にアレルギーがある、1回目の投与でアナフィラキシーを生じたなど)に限られます。ワクチンの添加物については厚生労働省のホームページをご参照ください。

日本人の先行接種者におけるコミナティ(ファイザー社のmRNAワクチン)の副反応を表にお示しします。
ご覧のように1回目2回目とも9割以上の方が接種部位反応(そのほとんどが接種部位の疼痛)を生じます。また、2回目接種後は3人に2人が倦怠感、2人に1人が頭痛。3人に1人が発熱を生じます。
副反応としてはかなり多いな、という印象を受けると思いますが、先行接種は現役医療従事者で行われたため、9割以上が65歳未満であり、(後ほど述べるように)65歳以上に比べて副反応が出やすい年齢層が中心であったことが関係しているかもしれません。これらの症状は2~3日で改善することが多く、長期的に問題になるリスクは高くありません。

接種後の反応
【 コミナティ筋注 】
1回目
n=19,035
2回目
n=3,933
接種部位反応92.9%93.0%
倦怠感23.2%67.3%
頭痛21.2%49.0%
発熱(≧37.5℃)3.3%35.6%
発熱(≧38.0℃)0.9%19.1%
鼻水10.3%13.0%
厚生労働省/副反応検討部会及び安全対策調査会合同会議
(2021/3/26)

一方、全国の都市部を中心に2021年5月から開始された大規模会場での集団接種はCOVID-19ワクチンモデルナ筋注(モデルナ社のmRNAワクチン)が中心です。
2021年4月5日に報告された米国CDCのv-safeという安全監視システムに基づくweb調査によると、米国ではファイザー製と比較してモデルナ製の副反応が全体的に10%程度多くみられています(2021年6月9日の厚労省報告ではアナフィラキシーなど重篤な副反応はモデルナ製のほうが少ないようです)。また、65歳以上は65歳未満に比べて副反応が少ない傾向にあるようです。効果は両製剤ほぼ同等です。

これらのメリットとデメリットを考慮しつつ、心配な場合は主治医の意見も聞きながら投与するかどうかを決めていただきたいと思います。

コロナワクチンとリウマチ膠原病

自分の病気はコロナワクチンを投与して問題ないか、と心配な方もいらっしゃるでしょう。
リウマチ膠原病といっても様々な病気がありますが、基本的にこの病気だからコロナワクチンが接種できない、というものはありません。ただ、病勢が非常に強く(または不安定で)、ワクチン接種を推奨できないケースもあるかもしれません。
日本リウマチ学会からの提言(2021年2月20日更新)では「接種するなら疾患活動性が安定してから」となっています。米国リウマチ学会からの提言(2021年4月28日更新)では「ICUに入るほど重症でない限り、疾患活動性に関わらずできるだけ速やかに接種する」ことを“中等度から強く”推奨しています。したがって、病状が安定していると言い難い場合には、主治医と相談しながら判断するのが望ましいと考えます。

コロナワクチン投与時における免疫抑制薬の扱い

リウマチ膠原病で治療中の方にとって、コロナワクチン投与時に現在の治療薬を続けても大丈夫か、と心配される方は多いと思います。
ワクチン投与前後において定期治療薬をどう扱うかについては主治医に一任されており、日本リウマチ学会からの提言(2021年2月20日更新)では「基本的には接種前後で免疫抑制剤やステロイドは変更せず継続すべきであり、具体的にどうするかについては、担当医とご相談ください」となっています。一方、米国リウマチ学会からの提言(2021年4月28日更新)では、病勢がコントロールされていることを前提に、一部の薬剤について使用延期を“中等度”推奨しています(そこそこお勧めしますというニュアンスです)。これら薬剤の延期・休薬はワクチンの効果を高めるのが目的であり、こうしないとワクチンが打てないという意味のものではありません。したがって、病気のコントロールを悪くしてまで調整を行うべきものではありません。以下に個々の薬剤に関する延期・休薬方法を記載します。表に記載のない免疫抑制薬やステロイドはすべてそのまま継続が基本となっています(エンドキサンとリツキサンの記載は省略しています)。これらはあくまで米国リウマチ学会からの推奨であり、準じるかどうかは主治医の判断となります。

薬剤一般名、通称
ジェネリック名
先発品名延期・休薬のタイミング
メトトレキサートリウマトレックス接種後1週間休薬(1回目、2回目ともに)
ミコフェノール酸モフェチルセルセプト接種後1週間休薬(1回目、2回目ともに)
JAK阻害薬※5種類あります接種後1週間休薬(1回目、2回目ともに)
アバタセプト皮下注射オレンシア皮下注接種前1週間・後1週間休薬(1回目のみ)
アバタセプト点滴オレンシア点滴静注点滴4週後に接種、その1週後に点滴(1回目のみ)
COVID-19 Vaccine Clinical Guidance Summary for Patients with Rheumatic and Musculoskeletal Diseases (Version 2), ACR 2021
※5種類のJAK阻害薬=ゼルヤンツ、オルミエント、スマイラフ、リンヴォック、ジセレカ

その他に2021年6月3日に欧州リウマチ学会で発表されたイスラエルからのデータでは、免疫抑制療法を受けているリウマチ膠原病疾患(関節リウマチ、乾癬性関節炎、全身性エリテマトーデスなど)の患者(653人、平均56歳)はコントロール群(121人、平均50歳)に比べてコロナワクチン(ファイザー製)投与後の抗体陽性率が低く、特にリツキシマブ(リツキサン)、アバタセプト(オレンシア)、MMF(セルセプト)は顕著であり、メトトレキサートやステロイドでもやや低下傾向でした。対してTNF阻害薬、IL-6阻害薬、IL-17阻害薬はそれぞれ単独使用であればまったく影響はありませんでした(JAK阻害薬もあまり影響がないようです)。ただ、これらの薬剤はいずれもメトトレキサートと併用すると抗体陽性率の低下が若干みられました。
これとは別に2021年4月26日に英国から報告されたデータでは、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎とクローン病)患者に対してTNF阻害薬であるインフリキシマブ(レミケード)群(865人)は炎症性腸疾患専用のバイオ製剤であるベドリズマブ群(428人)に比べてコロナワクチン(ファイザー製、アストラゼネカ製)1回目投与後の抗体価が低くなるという結果が報告されています。前述のイスラエルのデータとは結果が異なりますが、レミケード群の一部はメトトレキサートを併用している可能性があり、それだと多少納得できる結果と言えなくもありません。このあたりの個々の薬剤についてはまだ十分なエビデンスがあるとは言えず、共通認識を得るにはもう少し時間が必要そうです。

いずれにしろ「リウマチ膠原病の病勢安定のほうがワクチンの効果減弱防止より大切である」というのは共通認識であり、主治医から明確な指示があればそれに従うようにしましょう。ただ、患者さんご自身にもそれぞれ優先したい事項があるでしょうから、これは私見ですが、病気が安定している方に限っては休薬推奨のない免疫抑制薬でも一時的に休薬する選択肢や、逆に病気は安定しているけれど悪化するのが心配だから休薬推奨のある免疫抑制薬を継続しながらワクチンを打つという選択肢もあってよいと思います。ただ、ステロイドだけは人体に必須のホルモンであり、計画的な減量は可能だとしても定期内服中の休薬は副腎不全を生じるリスクがあるためお勧めできません。

表にない定期薬の延期・休薬については慎重になる必要があり、主治医とご相談いただければと思います。

ワクチン接種後のマスク着用について

最後にマスクに関するお話です。ワクチン打ったし、もうマスクいらないや!とマスクをしなくなる方が増えるかもしれません。ワクチンの予防効果は100%ではありませんので、マスクなしの会話や咳・くしゃみで飛散したウイルスを無防備な状態で浴びて感染・発症する人が出てくると思います。海外から感染力が強くワクチン予防効果の低いウイルスが持ち込まれる可能性も随時あり、やがて日本で新規発症がなくなったとしても、海外で感染者が発生している限り、安心はできません。人類が新型コロナウイルスを克服できたとしても数年はかかるでしょうし、まだしばらくはマスクが必要でしょう。
とは言え、ワクチン接種が進んだイスラエルや米国はマスクなしの外出を容認していますし、日本でもオリンピック後に予想より早くマスクなしの暮らしができるようになるかもしれません(ただ、イスラエルは感染国からの入国管理を徹底、米国はワクチン2回接種完了者のみのマスク解除で日本と背景は異なります)。いずれにしろ、行政から「マスク着用は必須ではない」との呼びかけがなされない限りは自己判断でマスクをはずなさいよう心がけましょう。

TEL
03-3541-2323予約制
院長
清水 久徳
診療内容
リウマチ科、内科、アレルギー科
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