コロナワクチンと免疫抑制薬

更新 2022/1/30

ここではコロナワクチンと免疫抑制薬について述べたいと思います。

コロナワクチンの効果について

新型コロナウイルス感染症は現在も変異を続けており、その特性も変化しています。これまでファイザー製95%/モデルナ製94%と高い有効性(発症予防効果)のあったワクチンもオミクロン株に対しては効果が低く、英国の報告では2回接種後1ヵ月で70%程度、半年で10%となっています。3回目接種でまた70%程度に回復しますが時間とともに低下していくようです。しかし、65歳以上で3回目の追加接種10週後に約90%の高い入院予防効果がありました。日本でも重症化している方はワクチン未接種者の割合が多く、このデータを裏付ける印象です。

また、新型コロナウイルス感染症の後遺症(倦怠感、睡眠障害、嗅覚・味覚障害、脱毛、関節痛、動悸、呼吸困難感など)が問題となっています。これらの後遺症は感染者の3割ほどで生じます。多くは数週間程度で改善に向かいますが、中には1年以上長く苦しんでいる方もいます。
ワクチンによってこれらを未然に防ぐことができるというのも大きなメリットと言えます。

コロナワクチンの副反応について

事前にコロナワクチン接種を諦めざるを得ない状況はごく一部の特殊な場合(ワクチンの添加物にアレルギーがある、1回目の投与でアナフィラキシーを生じたなど)に限られます。ワクチンの添加物については厚生労働省のワクチンQ&Aをご参照ください。

接種時の副反応については同じく厚生労働省の報告が参考になります。
3回目接種におけるデータとしては、米国では2回目と比較して副反応に大きな差はなかったものの、リンパ節の腫れの頻度が少し高くなっているようです。
これらの症状は時間とともに改善することが多く、長期的に問題になるリスクは高くありません。

これらのメリットとデメリットを考慮しつつ、心配な場合は主治医の意見も聞きながら投与するかどうかを決めていただきたいと思います。

コロナワクチンとリウマチ膠原病

自分の病気はコロナワクチンを投与して問題ないか、と心配な方もいらっしゃるでしょう。
リウマチ膠原病といっても様々な病気がありますが、基本的にこの病気だからコロナワクチンが接種できない、というものはありません。ただ、病勢が非常に強く(または不安定で)、ワクチン接種を推奨できないケースもあるかもしれません。
日本や米国のリウマチ学会ではそれぞれ「接種するなら疾患活動性が安定してから」「ICUに入るほど重症でない限り、疾患活動性に関わらずできるだけ速やかに接種する」ことを推奨しています。したがって、病状が安定していると言い難い場合には、主治医と相談しながら判断するのが望ましいと考えます。

コロナワクチン投与時における免疫抑制薬の扱い

リウマチ膠原病で治療中の方にとって、コロナワクチン投与時に現在の治療薬を続けても大丈夫か、と心配される方は多いと思います。
ワクチン投与前後において定期治療薬をどう扱うかについては主治医に一任されており、日本リウマチ学会は「基本的には接種前後で免疫抑制剤やステロイドは変更せず継続すべきであり、具体的にどうするかについては、担当医とご相談ください」と述べています。一方、米国リウマチ学会は、病勢がコントロールされていることを前提に、一部の薬剤について使用延期を“中等度”推奨しています(そこそこお勧めしますというニュアンスです)。これら薬剤の延期・休薬はワクチンの効果を高めるのが目的であり、こうしないとワクチンが打てないという意味のものではありません。したがって、病気のコントロールを悪くしてまで調整を行うべきものではありません。以下に個々の薬剤に関する延期・休薬方法を記載します。表に記載のない薬剤(プラケニル、プレドニン、ケアラム、リマチルなど)はそのまま継続が基本となっています(点滴薬のエンドキサンとリツキサンは省略)。これらは米国リウマチ学会からの推奨であり、準じるかどうかは主治医の判断となります。

薬剤一般名、通称
ジェネリック名
先発品名延期・休薬のタイミング
サラゾスルファピリジンアザルフィジンEN接種後1~2週間
タクロリムスプログラフ接種後1~2週間
シクロスポリンネオーラル接種後1~2週間
メトトレキサートリウマトレックス接種後1~2週間
ミコフェノール酸モフェチルセルセプト接種後1~2週間
JAK阻害薬※5種類あります接種後1~2週間
ベリムマブベンリスタ接種後1~2週間
アバタセプト皮下注射オレンシア皮下注接種後1~2週間
アバタセプト点滴オレンシア点滴静注点滴1週前にワクチン投与
COVID-19 Vaccine Clinical Guidance Summary for Patients with Rheumatic and Musculoskeletal Diseases (Version 4), ACR 2021
※5種類のJAK阻害薬=ゼルヤンツ、オルミエント、スマイラフ、リンヴォック、ジセレカ

先ほども述べたように「リウマチ膠原病の病勢安定のほうがワクチンの効果減弱防止より大切である」というのが皆の共通認識です。病状が安定していないのに無理に薬を止めようという趣旨のものではないため、主治医から明確な指示があればそれに従うようにしましょう。ただ、患者さんご自身にもそれぞれ優先したい事項があるでしょうから、これは私見ですが、病気が安定している方であれば休薬推奨のない薬剤でも一時的に休薬する選択肢や、悪化するのが心配だから休薬推奨のある薬剤を継続しながらワクチンを打つという選択肢もあってよいと思います。ただ、ステロイドだけは人体に必須のホルモンであり、計画的な減量は可能だとしても定期内服中の休薬は副腎不全を生じるリスクがあるためお勧めできません。
いずれにしても自己判断は極力避け、主治医の判断を尊重するようにしましょう。


以上はコロナワクチンに関するものであり、その他のワクチン(インフルエンザ、肺炎球菌、帯状疱疹等)についての推奨は特にありませんので、気になる場合は主治医とご相談ください。

TEL
03-3541-2323予約制
院長
清水 久徳
診療内容
リウマチ科、内科、アレルギー科
住所
〒104-0044
東京都中央区明石町11-15 ミキジ明石町ビル2階
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