発熱

更新 2021/3/20

発熱とは

発熱とはなにか、と質問されたら「いつもより熱が出ている状態」かな、とみなさん考えると思います。この表現は的を射ており、実は発熱には確固たる定義がありません。というのも体温には個人差があるからです。
詳細は後ほどお話しますが「37.5℃以上、もしくは平熱から少なくとも0.5℃の上昇」のいずれかをもって発熱とするのが現実的なのではないかと考えます。

日本人の平均体温(腋窩)を調べたデータによると10~50歳で36.89℃、65歳以上で36.66℃(それぞれ±0.3~0.4℃の幅あり)、つまり平熱といえば36℃後半、高めの方は37℃前半ということになります。 思ったより少し高いかなという印象ですが、 体の内部(37℃台)と比べて体の表面の温度はやや低く、正しいやり方(腋の下で測るとき汗を拭きとって斜め下から奥まで差し込みしっかり脇を閉じたままじっとしている)で測定しないと実際より低めに表示されてしまうことが多いからかもしれません(非接触型体温計ではさらに低めな印象です)。また、体温は日内変動(1日の中での差)が0.5~1.0℃くらいあり(明け方低く、夕方高い)、高齢者に比べて若い方で変動が大きいようです。

感染症法に基づく医師の届出基準においては37.5℃以上を発熱と明記していることもあり、日常診療ではこれに準じることが多いようです。ということは普段36.9℃の人にとってはその間37.0~37.4℃を微熱と言ってよいのかもしれません(微熱にも明確な定義がありません)。一方、自分の平熱は35℃後半だという方も少数ですがおられるでしょう。この場合は36℃台でも熱っぽくてつらいかもしれません。このような方は「36℃台は平熱の範囲ですよ」と言われても納得いかないと思います。逆に、普段から37℃台前半の方はわずかな上昇でも発熱していることになってしまいます。これらのケースでは0.5~0.7℃の体温上昇で発熱と判断するという文献の考え方が妥当かと思います。

発熱の仕組み

人間の体は生存に適切な体温を保つために熱を作ったり(熱産生)、逃がしたり(熱放散)しています。
暑いと感じたときには熱産生を止め、末梢血管を拡張して皮膚表面で熱放散し、また発汗して気化熱で体を冷やします。 この反応では対応できないほどの暑熱環境(暑さや湿気)による体温上昇(高体温)は熱中症と呼ばれます。
一方、寒いと感じたときには無意識に骨格筋を収縮させたり(ふるえ熱産生)、褐色脂肪細胞が脂肪を燃焼させたり(非ふるえ熱産生)することで熱産生しつつ、末梢血管を収縮して皮膚表面での熱放散を防ぎ、体を温めます。
これらの指令を行っているのが脳の視床下部(の視索前野)という部位であり、体温調節中枢と呼ばれています。視索前野は皮膚で感じ取った周囲の温度に応じて熱産生と熱放散をコントロールし、体温を調節します。

発熱は本来、感染症に対する生体防御反応として生じると考えられており、体温が上がることで免疫細胞の働きが活発になったり、ウイルスの増殖を抑制するなどの効果があります。感染症では免疫細胞からの様々なサイトカイン(免疫系の情報伝達物質)や微生物由来のトキシン(毒素)が血中に放出されますが、これらの刺激により視床下部の血管内皮細胞でプロスタグランジンE2が作られます。これが体温調節中枢である視索前野に作用すると、寒冷刺激を受けたときと同様の反応(熱産生促進と熱放散防止)が起こり、発熱します。リウマチ膠原病においても自己免疫反応により放出されるサイトカインによって同様の機序で発熱することがありますが、発熱のしやすさは病気によって異なります。

発熱の原因

これまで一度も発熱を経験したことがない方はいないでしょう。熱が出たとき誰もがまず考えるのは風邪です。元気な方が発熱したとき、たいていは風邪のようなウイルス感染症によるものであり、数日で治ってしまいます。しかし、ときになかなか下がらない・繰り返し出る熱に悩まされる場合があります。医療機関で診療を受け、ある程度の時間が経過したにも関わらず治らない熱は重大な病気の前触れである可能性があり、注意が必要です。

こういったやっかいな熱の中で「腋窩温38℃(口腔温38.3℃)以上を複数回含む発熱が3週間以上続き、3回の外来検査(もしくは3日間の入院検査)で診断のつかない熱」を不明熱と呼びます。
不明熱は原因不明のまま自然軽快することもありますが、感染症、膠原病、悪性腫瘍の3つがその原因として代表的であり、これらで全体の半分以上を占めます。それぞれのカテゴリーごとにたくさんの病気があるため、その候補は膨大であり、症状が発熱のみであれば正確な診断はまずできません。しかし発熱とともに生じている症状や検査異常があれば、それらを手掛かりに診断できる可能性が高まります。
膠原病では、特に39~40℃近い高熱が出る病気として全身性エリテマトーデスと成人スティル病が挙げられます。
また、これら以外の原因で忘れてはならないものとして薬剤熱があります(ときに39℃以上の高熱が出る場合があります)。定期的に使用している薬があればまずその可能性を除外しなければなりませんし、特に始めて間もない(数週間以内の)薬があれば被疑薬として最有力となります。薬剤熱の治療は、唯一その薬剤の中止です。しかし薬の自己中断は元の病気の悪化を招く可能性があるため、まず処方された医療機関に問い合わせるようにしましょう。
その他の原因では、甲状腺疾患、炎症性腸疾患、肺血栓塞栓症、ストレスによる心因性発熱、その他にも稀な疾患で診断の難しいものもあり、不明熱の診断には時間がかかることがあります。そういった場合は自分なりに気付いた症状や経過をできる範囲でメモしておいて診察のときに報告するとよいかもしれません。

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院長
清水 久徳
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